汚レ唄



「蒼?どうせならご飯食べてから迎えに行きなさいよ」


今から行ったってずっと待ってなきゃいけないんだから。

と、母さんの声が怒りを含んだ言い方に何か引っかかる。



「……なんで怒ってんの?」

素直に疑問を投げかけてみる。

母さんは一瞬、キョトンとしたが、すぐに「怒ってないわよ」と目をそらした。



……怒ってる。

その態度は逆に怒ってることを意味していた。




何も言わずにただ母さんが次に話すのをただ黙って待っていると、小さな声でただね……と話を付け加えた。

「ただ……なんで今シャワーを浴びたのかわからなかっただけよ」


「それは、汗くさいから……」


「それに、家に帰ってからもまたお風呂はいるわけでしょ?3時間くらい汗臭いの我慢できないのかしらって思っただけよ。口うるさくってごめんなさいね」




我慢?
我慢って……。



それは俺が我慢することなのか?


それとも麻緋に我慢させるのか……


「で、ご飯は……」

「帰ってから麻緋と食う」



俺は、濡れたままの髪で外に飛び出した。
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