汚レ唄


「蒼くん、笑ってる」

「へ?」

「いいことあった?」

「これからあるんだよ」



隣を歩いてる中峰が口元に手をやりクスッと笑った。


「なんで笑うんだよ」

「蒼くん、前にも同じこといってたなぁって思って」

「そうだっけ?」

「うん、前に学校で」

「よく覚えてんね」

「蒼君との事は覚えてるよ。忘れたくないから」


ニッコリと満面の笑みを浮かべる中峰を見てズキンと心が痛む。


コレは中峰に対する罪悪感?


中峰のことは好きだよ?

だけど、麻緋の好きとはなにか違う。

好きは好きでも浅い好き。


何が何でも守りたい、そんな好きじゃない。

なら、どうして付き合うんだって思うかもしれない。

好きは好きでもどうしようもない好きもあって、だからもがき苦しんで


どうしようもない。

どうすることもできない。





「蒼君??」

「ん?」

「……何考えてんの?」

「ん〜??なんも」

「そっか」




中峰はそれきり、コチラを向くことが無かった。

図書館についてもお互い、一言も話さず、……まぁ図書館だから話しちゃいけないんだけど。


黙々と宿題を終わらせていく中峰。


俺はと言うと全く何も進んではいない。


実は図書館っていう場所はあんまり好きではない。


静かで堅っ苦しくて、正直、俺向きではなかった。


だけど中峰が“先に宿題を終わらせれば後で一杯遊べるから"と言いだして図書館デートが始まったんだ。

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