汚レ唄
そこに立っていたのは予想していた通り、麻緋で……
オレンジのタンクトップに膝上のデニムのスカートを履いていて、その、正直、足やら腕やら出すぎていて目のやり場に困る。
「これでどう?」
麻緋の自慢気な声。
そんな格好して、男もコンサートにいるのに、なんかあったらどうするつもり?
というか真っ白な麻緋の腕やら足を他の奴に見せたくないんですけど。
「蒼?」
「露出高すぎね?」
黙り込んでる俺を不安に感じたのか、伺うようにコチラに近付いてくる。
そんな麻緋を直に見ることもできずに目をそらしたまま注意するけど、麻緋はまるでわかってないようで
「みんなこんなもんだよ。ほら、窓の外見てみなよ。タンクトップの人いるじゃん」
とベッドに乗って、俺の隣から窓の外を見下ろして指差している。
だけど、その指差した人は男だろーが。
「ばーか、あれは男だろ」
「まぁ、男の人だけど、女の人だってタンクトップくらい着るもん」
「はいはい。でもそれはやめとけ。」
「なんで??」
「麻緋には似合わない」
そんな肌を露出するのは麻緋じゃない。
そう言った時、麻緋は唇を噛んだ。
……やばい。
「蒼のばーーーーーーーーーーか!!!」
麻緋は立ち上がるとドアに向かい、そして振り返ってイーっと歯をだして出て行った。
『バンっ!!!!』
ドアが壊れるんじゃないかってくらい乱暴に閉めて。
「……あ〜!!!もっと言い方とかあるじゃんよ!!なんだよ、俺!!」
怒らせてどうすんだ。
そもそも、これは麻緋を喜ばすために考えたことなのに。
でも、麻緋が一生懸命服を選んでくれてるところを見てると、キューンって嬉しくなるんだもん。
俺と行くコンサート、そんなに楽しみにしててくれてるんだ。って。
服選びも慎重になるくらい考えてくれるんだって想うと嬉しくて嬉しくて仕方ねーんだよ。
でも、麻緋を怒らせたのはまずかったな。