汚レ唄
「危ないんじゃねーか?柄悪いのがあんまりいなくて、ストリートしてる人が多い6駅向うの都会の駅の方がいいんじゃね?」
「それはそうなんだけど、そこまで行くとしたら電車賃がかかっちゃうじゃない?
だから週に2回くらいそっちで歌って、それ以外は地元で歌っていこうって思うんだよね」
う〜ん。と蒼があぐらをかいて唸り声を上げる。
なんでかコンサートの後から蒼に音楽のことを相談することが増えていた。
頼りになる弟。
多分それだけなんだろうけど、悩んだらすぐに蒼に相談した。
「その……ストリートミュージシャンは、学校始まったらどうするつもり?」
そう、今は夏休み。
だから時間に融通がきくわけだが、あと2週間ほどで学校が始まってしまうのだ。
多分学校が始まったら、宿題やらテスト勉強やらで歌う時間がなくなってしまうかもしれない。
だけど……
「まずは1回歌ってみないと分からないけど、多分、学校行ってもすると思う」
この快感が辞められるはずは無い。
「……わかった。じゃあ俺もついて行く」
「なんで?」
「危ないからに決まってんだろ」
「いいよ!!私1人で大丈夫なんだから」
私は好きな音楽を歌うために使う時間だけど、蒼は違うじゃんか。
そんなの悪い。
私の趣味に蒼まで巻き込んじゃいけない。
それに、蒼は中学2年生。
遅い時間まで連れまわしていい年齢じゃないし、早ければ今からでも受験勉強をしている人だっているのに。
たしかに不良の人たちに何か言われたら怖いけど、だけど蒼に甘えちゃダメだ。