汚レ唄


これでも家族の欲目とか言うのか?



言えねーだろーが。


って言いたいところをぐっと堪えて、麻緋を見た。





人と人との間からたまに見える麻緋の顔は汗がきらめいていて、満面の笑顔だった。



「麻緋は、音楽、やるべきだよ」




そう静かに言うと、「……ん」とかすかな声が聞こえてきたのだった。



雲が時折隠す、妖しい満月の下でウサギのようにピョンピョン跳ねて歌う麻緋は本当に見るもの全てを虜にする。



その声で掴んでは離さない。



だからこそ、この両親を納得させたのは麻緋の歌の力だ。



俺はアシストしただけ。



あんなに頑なに反対していた親が今ではうっとり聴き入ってる。








聴く人全てを魅了する歌姫。



将来そう言われてる姿が目に浮かんでくる。


麻緋、よかったな。




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