ヒミツの恋の方程式
ドアに覆いかぶさり、みっともなくうろたえるあたしに、


「雫。
うるさい」


聡は鋭い声を投げつけ、あたしの腕をとってドアからあたしの体を引っぺがし、すぐ間近、真正面からあたしの顔を見下ろした。


「これから。
んなことより“いいもの”を雫にやるよ」


真剣な顔でそう言うと、聡はすぐに余裕の笑みを取り戻し、あたしの頬をするりと撫で――…


「雫ちゃん。
いい子だから、お口を開けようね」


からかうような口調で、あたしの唇をグイっと親指で押し下げた。

< 166 / 209 >

この作品をシェア

pagetop