alternative
「やめろぉおぉぉおぉっ!」

ベッドから飛び起きる。

静まり返った病室。

時雨は全身にびっしょりと汗を掻き、呼吸まで乱していた。

胸と腹には包帯。

完璧な処置が施されている。

だがあの負傷だ。

流石に痛みは残っている。

(夢を見ていたのか…)

小さく息を吐く時雨。

そうだ…任務から戻って、ヘリを降りた途端に緊張の糸が切れたのか、気を失って倒れて…。

そのまま医務室へと担ぎ込まれたのだった。

訓練分隊のヒヨッコどもが、ピーピー泣き喚いていたのを覚えている。

私がこの程度の傷で死ぬ筈がないのに…。

「……」

腹の傷を軽く押さえ、時雨は自嘲気味に呟いた。

「私は…また死ななかったのだな…」

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