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任官
時雨が手術室に搬送される。

軍医と、看護兵に付き添われて横たわる時雨。

痛みに時折顔を歪め、額には汗を浮かべている。

「それではここからは手術室の外でお待ち下さい」

時雨を心配してついてきていた隊員達に軍医が言う。

その背中に。

「おい」

綾斗が軍刀の柄尻を突きつけた。

「『手術』をしろよ?時雨教官の傷を治す事に全力を傾けろ。もし時雨教官をこれ以上おかしな『実験』に巻き込むような真似してみろ…その時は『俺』が…」

戦慄する程の睨みを利かせる綾斗だが。

「止せ…」

時雨がそれを制した。

「この軍医は私に臓器を移植した医師じゃない…それに…私は最早『モルモット』としても使い道はない…何せこの体ではもう戦う事もできんからな…」

自嘲するような時雨の言葉。

そのまま彼女は、隊員達に見送られて手術室へと運び込まれた…。

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