彼は対人恐怖症。



 ……どこ行くんだろう。

 変な場所じゃないよね?

 彼の歩くスピードは速くて、私は小走りになってしまう。

 すると、彼は急に足を止めた。

 「あの…?」

 ここは…公園?

 ジャングルジムや滑り台。

 ブランコなど、小さい頃に遊んだ記憶のある遊具がある。

 彼は水道へ行き、ポケットからハンカチを取り出すと、水に浸していた。

 「あの、これ…使ってください…」

 そして、ハンカチを私に手渡す。

 「……?」

 私が首をかしげていると、彼はオズオズと言った。

 「あ、の…ほっといたら、染みに、なるから…それ…」

 そして、私の肩を指差す。

 肩に目をやると、さっきかかったコーヒーが目についた。

 「あぁ…そっか」

 「は、ハンカチ濡らして叩いておいたら…し、染み抜きできると思っ…て…」

 相変わらず、震えた声で喋る彼。

 「ふふ、ありがと」

 なんだか、かわいいと思ってしまった。



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