【短編】ダメ男依存症候群

「彼氏君?」

 カオルがにんまりと笑って聞いてきた。


「何で分かったの?」


「だってねぇ……」


 再び携帯が震える。早い。旬からだ。


『うん! ナツ最高!! 愛してる』


 ハートマークを無駄に多く使っている。画面が真っ赤だ。旬が嬉しい時など、こういうメールが多い。

奈津美はあれだけしかメールを返してないのに、単純だ。でも、分かりやすい。


「顔、ニヤけてる」


「え!?」

 カオルに指摘され、奈津美は画面から顔を上げた。


「その顔見たらすぐ分かるわよ」


 そう言われて、奈津美は顔が赤くなるのを感じた。


 これは、旬の唯一のいいところなのかもしれない。

 旬は、普段の生活はあんなにもだらしないのに、マメなところがある。メールや電話は一日一回は旬からくれる。

今朝のサンドイッチのことのように、些細なことでも誉めたり、お礼を言ったり……それに奈津美は『キュン』となる時がある。普段がああなだけに、そのギャップがあるのだろうか。


 奈津美は、旬のそういう部分にやられているというのも確かだったりする。

< 10 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop