【短編】ダメ男依存症候群
「だから、奈津美はよっぽど彼氏君のことが好きで、彼氏君は奈津美をそういうふうにさせるぐらいに、奈津美のことが好きなんだって、あたしは思ってた」
カオルは、お茶を一口飲み、また更に続ける。
「別に奈津美はそうじゃないっていうなら、それで別れるって言うんなら、あたしは何も言えないけど……当人同士のことだし。でもやっぱりちゃんと話してから別れなよ?自然消滅とか、後々面倒なんだから」
最後の方は説得するような口調だった。
「……うん」
奈津美はやっと声を出し、頷くことができた。
カオルと別れて、奈津美はトボトボと帰路についていた。
じっくりと、考えてみる。旬と、奈津美自身のことを……
別れて後悔しないのか……と聞かれたら、正直どうか分からない。ただはっきり言えるのは、後悔しないとは言いきれないこと。
こんなこと、考えるのは初めてだ。旬と別れるなんて、考えたことなんてなかったのかもしれない。
『俺、ナツを振るなんてバカなこと絶対しないよ。だから、ナツも俺のこと振るなよな』
ふと、その言葉を思い出す。旬が口癖のように言うことだ。
それを聞くと奈津美は、『分かってる』と軽く曖昧に返事をしていた。
その言葉を信じてないというわけではないが、当てにもしていないというか、真に受けてはいなかった。
こんな会話は、付き合えば定番のものだと思っているのだ。