【短編】ダメ男依存症候群

 ゴミの分別とか、旬にしてはしっかりと考えていると思ったら、他のゴミ袋も色んなゴミが混ざっていて、大してできていないことがわかった。

 …それでも、今までの旬と随分違うと気付いている。


 こうやって、旬も一緒に掃除をするのは初めてだし、部屋の中にあるゴミ箱が、いつもと違って満杯になっているのは、


『ゴミはゴミ箱に入れてっていつも言ってるでしょ!』


 何度もそう言ってたのを、意識してだろう。

 旬は旬なりに、奈津美のためを考えている。

 今も燃えるゴミと燃えないゴミの区別がつかずに悩んでいるが、間違えていても、大目に見よう。


『俺だって、少しはナツに見直してほしいからさ…?』


 旬がそう言ったことが、今は何より嬉しかったから……


「あ、ナツ」

 いつの間にか、旬が奈津美の正面に回り込み、顔を覗き込んでいた。


「今日、俺があげた口紅つけてるでしょ」

 旬はニィッと笑いながら、嬉しそうに言った。


「うん」

 奈津美は半ば驚きながら頷いた。


 目聡い。

 確かに今日、旬に会うからと思って初めてその口紅を塗ってみた。

 でも、旬が選んだという色は、奈津美がよく使う色とそんなに変わらない、淡いローズピンクだ。塗ってみてもいつもとそんなに変わらないから、気づかないだろうと思っていた。

 それでも分かるのは、やっぱり旬だからだ。

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