ならばお好きにするがいい。
 
「それ、一口よこせ」


先生の長い指が、私のソフトクリームを指した。


「え……でも先生甘いの嫌いなんじゃ……」

「一口くらいは平気なんだよ」

「でも……」

「いいから」


「早く」 先生は、ソフトクリームを持っている私の手を掴むと、そのまま強引に唇に引き寄せた。


「甘ェな……やっぱ」


上唇についたクリームを舌でぺろ、と舐め取る仕草がどうしようもなく色っぽくて。なんだか恥ずかしくなった私は、ふいっと視線を外した。


「先生……」

「ん」

「……間接キス」

「いちいち言わんでいい」


小さく笑った先生は、既に私が半分くらい食べたカップのアイスに手を延ばした。


「あーっ!ちょっと先生、なんで勝手に食べてるの!」

「いいじゃねーか、別に。これ俺のアイス券で買ったやつだし」

「だめっ!返して!ていうか先生ほんとは甘いの食べれるでしょ!」

「食えねーよ。大嫌いだよこんなもん」

「じゃあしっかりその手に握られたスプーンは何なんですかっ!」



あまりに楽しくて、嬉しくて、幸せで、空がすっかり暗い紫色に変わっていることに、私は全く気付いていなかった。



 
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