欠落かぞく賛歌-家族-
ある日。
雨。
雨。
――雨。
雨音だけがわたしを包んでいた。
雨音。
雨音。
――確か、あの日も雨だった。
わたしと宮辺さんが仇敵になった日も雨が降っていた。
雨。
消える。
幸せが。
願いが。
消える。
――消える。
わたしは、一人なんだ。
雨の日はいつも、寂しく思う。
だからわたしは両親の遺品を探す。
何でもいい。
両親が残してくれたものが欲しかった。
それで、わたしは一人じゃなくなるから。
家の納戸を探る。
宮辺さんに断りは入れない。
それもいつものこと。
――お母さん、お父さん。
わたし、いい子にしてるよ。
いい子に、してるよ。
だから、顔が見たいよ。
わたしが探すのはいつもアルバム。
写真は人の面影が見えるから。
けれどすぐに見飽きてしまうから、新しいものを探す。
本の形をしているものなら何でも開けてみる。
――そこでわたしは、一冊の本を見つけた。
ハードカバーの装丁の本。
開けてみる。
……アルバムじゃなかった。
中はところどころ日付が書き込まれている。
わたしはそれが日記だとすぐにわかった。
誰の日記だろう?
ページを早送りでめくり、内容を確認する。