私が悪い
pppp...
携帯の着信音に気づき、私はストラップのたくさんついた携帯を鞄から取り出した。
ボタンを押し耳にあてると、再び駅にむかって歩き出す。
「もしもーし」
「・・・江美か?」
着信元を確認しなかったことを、後悔した。
「おとーさん」
ぎこちなく、言う。
「悪い。今日は帰れそうにないんだ」
「あ、そう」
まさかね。
私の最後が、あんたとの会話だなんて。
思いも、しなかったよ。
「おい!!あぶないっ」
どこからか聞こえた、叫び声。
でも、もう、遅かった。
鈍く、重い音がした。
一歩遅れて、痛みが走る。
視界の端に、携帯が舞う姿が見えた。
“死ねば”
言葉が蘇る
なぜか湿子の顔が、執拗に私の目の前をちらついた。
湿子の呪い・・・か。
死ぬのか。私。