桜、月夜、愛おもい。
「あははっ!読心術なんてないよ。これは愛の―」
「あ~授業始まるー。先輩そろそろ教室戻った方がいいですよ♪」
私は静谷先輩の台詞を遮って、さっさと帰れオーラを振りまきながら言った。
それが通じたのか、先輩はいつもよりはあっけなく帰っていった。
「本当に静谷先輩のこと嫌ってるのねー。静谷先輩かっこいいじゃない」
静谷先輩の後ろ姿を見つめながら、咲菜が苦笑する。
先輩が廊下の角を曲がった後も、暫くそのまま見つめていた。
「………」
随分前から少しは感づいてた。
咲菜の気持ち。
それと、静谷先輩の本当の気持ち。
ただ、二人共素直じゃないから、はっきり言えないだけで。