花にアラシ
ぱしんっと乾いた音。
繰り出された拳は華の掌に収まっていた。
嵐も、嵐の隣にいる2人の男達もその事実に目を見開く。
だが、その一瞬の間が致命傷だった。
華はそのままつかんだ腕をぐるっとひねると、自身も体をくるりと翻す。
そして、後ろ足で嵐の片足を蹴り払うと、ぐらりと前に体重が動いた嵐をそのまま地面へと叩き付けた。
「ぐっ…!?」
痛みに一瞬唸った嵐の顔面に、嵐が放ったものよりも早い拳が放たれる。
が、それは顔面すれすれのところでぴたりと止まった。
華は先ほどまで浮かべていた柔らかな笑みを一切消し、まるで感情のない機械のような表情を浮かべ、嵐を見下ろしていた。
「あたしの母を、会ってもいない母の事を貶す事だけは、絶対に許さない」
そういった華の瞳はあまりにも冷たくて。
屋上の空気は冷えかたまった。
「……あたしを義妹として認めなくても……構わないから…近づくなって言うなら、二度と近づかないから…」
だから、と続いた言葉はまるで懇願のようで。
「…母を、せめて母だけ、は……」
ぐっと言葉を飲み込み、華はぐっと眉を寄せて顔をしかめる。
「あんたがもし、私だけじゃなくその拳を母に向けた時は…」
呆然として華を見つめる嵐に、冷たくその言葉を放った。
「そのお綺麗な顔、元に戻せない位ぐっちゃぐちゃにしてやるから、覚悟して」
(私の世界は母がいなきゃ成立しない)(邪魔をするなら全力で排除するだけ)