これは恋ではない
確かに俺は人をまともに好きになったことはなかった。
向かってくる相手にノーガードなだけだ。
仕方ない…家庭のぬくもりを知らぬ俺は、一人の相手と連れ添うなどという幻想を持った朴念仁だったから。


女の子とはこんなに可愛く、愛おしいものなのか!

俺は生きていなかった。

人生を生きていなかったのだ!

愚鈍、愚直…悔恨だけが心を支配する…


人を生きることを棄てたアウトサイダーだとは思っていたが。
人の悦びさえも掌からこぼれ落ちていたのか…
人を捨てるどころか、人でさえなかったとは…
からからと荒野に風が走り抜けた。


彼女はきゃらきゃらと輝いて笑う。

(乾く喉を潤すために溢れ出る清水を貪る…)

彼女は普通の生活と、テレビの話しをさぞかし楽しそうに喋る…

(飲んでも人生と時間が戻ることはないが…オレハウエテイル)


人生を生きて来なかったのだから。
< 10 / 16 >

この作品をシェア

pagetop