初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「ありがとう」

 穏やかで優しい声が聞こえると、あたしのどきどきが大きくなる。

 でも――くすぐったいような、ほんのり温かい気持ちになってきて。

 あたしはそろりと顔を上げる。

「――」

 優しい表情であたしを見てくれているシンさんと視線が合う。

 シンさんは真っ直ぐな視線をあたしに向けてくれていた。

 柔らかくって、優しくて――穏やかな目。

 それが、あたしだけに真っ直ぐ向けられている。

 また初めて知った表情かも。

「っ――」

 恥ずかしくって、すぐに顔を伏せたけれど。

 じわり、と胸に甘い気持ちが広がっていく。

 シンさんだから、こんなに甘い気持ちになるんだ、って。

 目の前のクロワッサンを食べながら、あたしはそんなことを考えていた。

 そんな自分の気持ちの正体を正確に気付くのは――

 あとほんの少し経ってからの話。
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