初恋は前途多難！ ～朗らか社会人とメイド女子高生 【１：出会い編】

　お互いに緊張してか、会話らしい会話がない。

　恥ずかしがってあたしがずっと俯いたままなのが悪いんだと思うけれど……

「……」

　せっかくこうしているんだから、何か話さなきゃ――

　そう思い、必死に会話を頭の中で考える。

　けれど、いい会話が思いつかなくて――時間だけがいたずらに過ぎていく。

　ほんの少し、心の中で焦っていたら、

「――もしよければ……」

　お互い、クロワッサンを平らげ、カップの中の飲み物も少なくなってきた頃。

　不意にシンさんがそう声をかけてくれた。

「いい時間だし……今から、ランチを食べに行かないかな？」

「ランチ――ですか？」

　ふわり、と顔を上げることが出来たあたし。

　視線が合うと、シンさんは優しく微笑んでくれながら、

「うん。――実は、今日は少し寝坊したから……朝もちゃんと食べていないんだ」

　少し気恥ずかしそうに頭に手をやり、小さく笑いつつそう言う。

「付き合わせる形で申し訳ないけれど――さくらちゃん、ぼくと一緒にランチに行きませんか？」