初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
 バイト前のあの出来事が、さらに強くリピートされる。

 今浮かべているその表情とはまた違う、シンさんの知られざる一面。

 テーブルの様子を伺うのも恥ずかしいって思っちゃうくらい、あたしは凄く緊張していたと思う。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 それでも仕事は真面目にしなきゃいけないと思って、あたしはいつも通りを努めて装い、お冷とおしぼりを2人のテーブルに持って行く。

「ありがとう」

 いつものように楽しそうにメニューを眺めていたシンさんだったけど、あたしが来るとふわりとメニューから顔を上げて、

「お絵かきオムライスとパフェをお願いします」

 温かい笑顔であたしにそう注文。

「私はコーヒーで」

「はい。少々お待ちくださいませ」

 2人のいつもの注文を聞き、笑顔で頷いてテーブルに背を向けようとしたら、

「あ、待って。もう1つ注文したいんだ」

 不意にシンさんに呼び止められ、向こうに行きかけた体を元に戻す。

「もう1つ、ですか?」

「うん。――ぼくもコーヒーが欲しいんだ」

 微笑みながらも優しく見つめてくれているその目が、穏やかな声で注文を告げた。
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