初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「シンさん――っ……!」

 シンさんの名前を呼びながら走って目の前にやってくると、あたしの答えは大正解。

「え……さくら……ちゃん?」

 突然走って現れたあたしを見て、真治さんと何か話していたシンさんは、とても驚いた様子だった。

「そんなに息を切らした様子で――どうしたの?」

 肩で大きく息をしているあたしに驚き、眉をひそめて心配そうな顔をしてくれる。

「あの……これ……」

 上手く言葉が出せなかったけれど、1番の目的だった封筒を両手で差し出す。

「お店に……忘れていたので……」

「あ、この封筒――……すっかり忘れていたよ」

 封筒を差し出すと、シンさんは驚きつつも嬉しそうに受け取ってくれた。

「わざわざありがとう。この封筒、明日の会議で使う重要なものだったんだ。さくらちゃんが届けてくれて助かったよ」

「あぁ――よかったです……」

 本当に嬉しそうに言ってくれる様子を見て、あたしの心は報われた気分。

 よかった――シンさん、これで明日は困ることがなくなったのね……

 ちょっぴり、自分のことのように嬉しかった。
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