見えない糸
紗織とオジサンの糸
「ただいま…」

「お帰り、オジサン。ごはん作ったよ。今日はチキンカレーにした」

エプロン姿の紗織が、直次を玄関まで出迎えた。

『今夜はカレーだったのか…昼メシもカレーだったんだよな』

そう思いながらリビングに入る。

「今日のカレーは上手く出来たよ!オジサン好みの辛さだし」

「そうか、楽しみだな。じゃ風呂入る前に食べようかな」

「うん、一緒に食べようね」

紗織は機嫌良く、鼻唄を歌いながら、食事の用意をした。

「ちょっと待ってくれ。着替えてくる」

直次は2階の自分の部屋に戻り、スーツを脱いで部屋着に着替え、リビングに戻った。

「紗織、こっちで食べないか?天気もいいし、星も良く見えるぞ」

直次はウッドデッキの方を指差して言った。

「外はイヤよ。虫がいるもん。ちゃんと席について食べなきゃ」

テーブルにカレーとサラダをセットし、紗織はイスに座って待っていた。

「紗織は虫がニガテだったよな」

直次が笑いながら席についた。

「そうだよ。せっかくオジサン喜んでくれると思って、頑張って作ったんだから」

ニコッと紗織も笑った。

「料理好きの友達から“隠し味”を教えてもらって入れてみたのよ」

「うん、うまい!紗織、料理上手になったなぁ…意外と早く結婚するかもな」

「アタシはオジサンと一緒がいい。結婚したくない。彼氏もいらない…」

スプーンを持ったままボーッとする紗織を見て“まずいな…”と思った。

「じゃ、オジサンで良ければ、まだここにいてもらおうかな」

紗織を覗き込むようにして言うと

「うん!!」

と、紗織は笑顔一杯で返事をした。


食事が終わり一緒に後片付けをしてると

「オジサン、仕事まだあるんでしょ?ここはアタシがやるから、お仕事してきて」

「いいのか?大丈夫なのか?」

「大丈夫」

「じゃ…頼むよ」

紗織の頭をポンポンと軽く叩いて、自分の部屋に向かった。


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