見えない糸
変えられない真実

険しい表情になっていた紗織が、急に無表情に変わった。

その変化が直次は気になり、ノートに書き込んだ。

やはり紗織にとって、高谷の存在は、かなり重要な意味があるに違いない。

「紗織、高谷って誰なの?」

「...最近よく来る男...」

「遊びに来てるのかな?」

「新しいパパ...」

この時には紗織の母親は、再婚していたのか...
でも、小谷は『内縁のー』って言ってたはず。
手帳を開き確認すると、そう書いてあった。

小学生の子供に、籍を入れる・入れないなんて難しいし、そこまで詳しく話す必要もない。
だから、新しいパパだと紹介したのだろう。

「新しいパパなら、嬉しいんじゃないの?」

直次は、そう優しく言うと、無表情のままの紗織は

「パパなんていらない。ママだけでいい」

と答えた。

難しい年頃に、高谷が出入りするようになったんだから、紗織の中では高谷をパパとして受け入れたくなかったんだろう。

「紗織は、新しいパパ嫌いなの?」

「嫌い」

即答だな...直次は、笑いそうになったのを堪えながら、メモをとった。

紗織の表情が、また変わった。
さっきまで無表情だったのに、眉間にシワ寄せている

「紗織、どうした?」

「...来ないで...」

「どうした?誰に “ 来ないで ” と言ってるんだ?」

首を左右に振りながら、強い口調で言った。

「これ以上、近付くんじゃねぇッ!!」










< 92 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop