ダブルベッド

 桃香はうつむいたまま、小さな体を震わせるように告白する。

「こうでもしなきゃ、忘れていられなくて。忘れちゃいけないことなのに、忘れたくて」

「忘れるって、一体何を?」

「それはっ……」

 充の頭に浮かぶ、極悪非道な沢田の顔。

 もし彼が桃香をこうしたというのなら……。

 絶対に許せない。

 そんなの、忘れさせてやれる。

 ごくっと唾を飲み込み、桃香の答えを待つと……。

「言えない」

「どうして?」 

「知られたくないからよ」

「俺は知りたい。言える範囲でいいから」

「やめて。できれば思い出したくないの!」

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