キスフレンド【完】
「姫がいてくれてよかった」
その言葉に胸が張り裂けそうになった。
紫苑はあたしが考えるよりずっと深い闇を抱えていて。
その闇を一人で抱え込もうとしてる。
そして、今までもそうやって一人で抱え込んできたんだ。
たった一人っきりで……――。
「母親に2回も会うし、今日は厄日だ」
紫苑は苦笑いを浮かべながらあたしの腕を引っ張って立たせた。
「お母さんに……2回も会ったの?」
「そっ。姫がナンパされる少し前に会ったんだよ」
「あっ……。あのときの……」
あれって紫苑のお母さんだったんだ……。
どこかで見た気がしたのはそのせいだったんだね……。