キスフレンド【完】
唇を噛んで気持ちを押し殺していると、突然、あたしの腕が何かの力によって引っ張られた。
「……――っ!!」
あたしの腕を引っ張ったのが紫苑だと頭が理解したときには、目の前に紫苑の綺麗な顔が迫っていた。
「姫、キスしよっか」
「寝て……なかったの?」
何度声をかけても目を開けなかったじゃない。
唇に指先が触れた時だって、何の反応も示さなかったのに。
それなのに……――。
「寝てないよ。姫がキスしてくれるかもって思ったから待ってただけ」
紫苑から漂う甘い香り。
頭がクラクラして、何も考えられない。