求愛
「何が?」


「今日もお友達が心配して来てくれたのよ?」


「………」


「担任の先生からも何度か電話があったし、もうこのまま本当に、学校には行かないつもり?」


責めるような口調ではなくとも、不安視されているのはわかる。



「こんな風に言いたくはないけど、あと2,3ヶ月でしょ?」


「でも卒業したって祝ってくれるタカはいないじゃない!」


と、声を荒げてはっとした。


胸元には今も揃いのリングが輝いているというのに。


なのに、もしかしたらあの人はもう、と思うと、本当はいつも怖くなる。


例えばニュースから流れる殺人事件さえ、聞く度にまさかと思ってしまうのだから。



「わかったわ、もう言わないから。」


お母さんはため息を混じらせた。


何かを突っ込んで聞かれたことなんてないけれど、でも気付いてはいるだろう。


あの事件で、一体何人が犠牲になったことか。


エンペラーが自然消滅のような形で解散したとの噂も、最近のこと。



「ねぇ、それよりご飯にしましょう?」


お母さんは空気を変えるように言うけれど、



「ごめん、食べたくないし。」


もうずっと、あたしはまともな食事を取ってはいなかった。


それどころか、夜は薬に頼らなければ眠れず、カウンセリングにも通わされている。


死にたいわけではないのにね。

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