狼彼女のお気に入り



「……お、俺と踊っていただけますか?」



スッと前に手を差し出して頭を下げる。



ドクドクと心臓がうるさい。



なんで俺はこんなに緊張しているのだろうか…



俺は………



篠田にどうして欲しいんだ?









「………会長、」



差し出した手に冷たいものが乗せられて



顔を上げたその瞬間に、あまりにも綺麗に微笑んだ篠田と



吐息が重なった────






「っ…おまえ……」



“何してんだ”


そう言いたいのに、篠田の顔を見ると言葉が喉に詰まって出てこない。



前の時もそうだった。



いつもの馬鹿にしたような態度とは違い



少し悲しそうで



余裕なんかどこにもない



そんな表情の篠田を見ると、俺がおかしくなる。








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