新田高校演劇部の365日
1.「あんた、オモシロイわね」
その惨劇は入学式のこと。
校長の祝辞という拷問に耐え切った僕は、晴れて高校生になった。そして、高校生としての義務をまっとうする。
そう、部員勧誘だ。
「サッカー部入りませんか!?」「剣道部は週4で道場で活動してます!!」「軽音部は音楽室だよー!?むOちゃんのお茶とお菓子もあるよ!!」

たちまち手には、あれよあれよとビラの山ができる。しかし、このビラのほとんどが有効活用されないのだと考えると、何だか悲しくもなってくる。ってかなんなんだ部室でお茶とお菓子って。

そもそも僕は、部活に入る気はない。
僕のモットーは、「人に目立たず、人から浮かず。」めんどう事はごめんだし、僕は地味でも平穏な日々を送ることに重点を置いて生活している。部活というものは僕のモットーの対極にある。ゆえに部活には入る気がないのだ。

このビラ、どう処分するかな…

そんな不謹慎なことを考えながら、僕は自分の新しい教室に戻ろうとしていた。そのとき、僕はふいに声をかけられた。

「あれ?篠原君?」

見ると、そこには女子生徒がいた。校章の型から見て、一年生だ。
色白で、ウエーブのかかった髪の毛を肩まで伸ばしている。スタイルはほっそり系だ。ついでに言うと、大事なとこまでほっそりしている。いや、これはぺったんこというべきか。

「ああ、山口さんか。久しぶり。」

中学のときクラスメートだった山口さんだ。なるほど、彼女の頭の良さならこんな学校なんて楽々合格できるだろう。もっとも、ぼくにとってこれといった印象は、「洗濯板」しかなかったが。

あと2.5cmでせめてBにはなるんだろうな、なんて馬鹿なことを考えてたら、彼女はまったく気づかない様子で、こう言った。

「ねぇ、ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけれども…」

結果としては、この一言で僕の高校生活が大きく変化したのだ。
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