女子高生名探偵の事件簿
「体を切り刻まれた死体・・・。」
古川がポツリとつぶやいた。その場のみながぎくりとした。
「オーナー。」
三田が声を上げた。
「呪いなんてあるはずがありません。みんなで戸締りを確認し、警察が来るまでじっとしていれば安全です。ともかく・・・。」
呆然とするオーナーに三田が話しかけた。
「三田さん。なぜ、安全だと言い切れるの?」
マイがたずねた。
「うん。じつは、ここから観測所までの道には足跡がひとつしかなかったんだ。ってことは、雪がやんだ今朝、津田さんはここから観測所までいった。そして、そこで殺害されていたんだから、強盗が観測所に進入して、そこで津田さんを殺害したんだと思う。だからこそ、こっちにはいってこられないように戸締りをしっかりして、館内をチェックしておくのが重要で一番安全だと思うよ。」
「すごい。三田さん。探偵みたいですね。」
リサが尊敬のまなざしで見つめる。
「わかった。みなでそうしてみよう。ただ・・・。」
オーナーが言葉を濁す。
「ただ・・・。」
いやな沈黙が全員のなかに流れた。
「電話が通じない。車も動かない。助けが呼べないんだ。」
オーナーがいった。
「そのうえ、すこし下ったところでなだれが発生している。道がないんだよ」
坂井がいった。
「なんということ・・・」
ヒカルが目を見開く。
「まじかよ・・・。」
古川の顔の血の気が引いた。
暖炉の薪がパチパチはぜる音が聞こえる。
その場の誰もしゃべらなかった。
ヒカルはタケシタが入れたさめたコーヒーをチビチビすすっていた。
タケシタとオーナー。立嶋は館内と見回りに行った。じっとしていては何も始まらないというタケシタの意見からだった。
ふいに背中をつつかれたのでヒカルは声を上げそうになった。
「ヒカル。ちょっと来い。」
タケシタが戻ってきていた。
ヒカルはなるべく音を立てないように席を立った。が、こんな現状におかれ、神経を尖らせているみんなには全く無意味。みなの視線を受けた。
「ヒカルちゃん・・・。」
リサが心配そうな声を上げた。
「ちょっと。ね。」
ヒカルがにっこり笑った。

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