女子高生名探偵の事件簿
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昔。このあたりを収めていた仔郷藩という小さな大名家があった。だが、先代の藩主がなくなり、後継者争いが勃発していた。先代の信頼を集め、一気に家老までのし上がった吾笠家を中心とする先代の弟を押すグループ。そして、筆頭家老山田家を中心とする若干2歳の嫡男を押すグループ。両者の協議は平行線上をたどっていた。
ある日、この藩にながれてきた元剣客がいた。そんなかつての勇伝を聞きつけた山田家当主。孝平は家臣に命じて彼の若い娘を誘拐し、こう命じた。
「山の上にある吾笠家屋敷に切り込み、女。子供にかまわずみな殺しにせよ。」
愛娘を人質に取られた剣客は一度、捨てた刀を娘のために握ることを決意した。剣客は言われるがままに吾笠家屋敷へと乗り込んだ。
彼は、自分の愛娘のために。吾笠の人間をみな殺しにした。子供も、命乞いをする女も無情に切り捨てた。すべては娘のために・・・。
だが、約束は守られなかった。兵を率いて攻め込んだ山田孝平は屋敷もろとも火を放った。娘はその屋敷の前で切り殺された。
剣客は炎に包まれながらも刀を持ち、山田孝平へと切りかかりそこで事切れた。
恨み。憎しみ。後悔という炎を背負った剣客の形相にみな怖気づいた。
それからというもの、山田家の人間は不可解な死を遂げて言った。体を切り刻まれた死体。それが続いた。人々は噂を伝え聞くとたたりを思い恐れおののいた。
たった。一年の間に吾笠家と山田家の血は途絶えたといわれている。
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