陰陽(教)師
善吉は鈴子の言葉を訂正した。

「汗をかく代わりにああして熱を発散しとるんじゃな」

ふむ、と興味深げに眺める様子は、さすがに学者だった。

「勝負は互角か」

嵩史は唸った。

その時、鳥の羽ばたきが聞こえた。

先ほど晴明が放った小鳥が、戻ってきたのであった。

小鳥は晴明の肩にとまった。

よく見るとくちばしに何かをくわえていた。

晴明は小鳥を乗せたまま庭へ降りた。

そのまま大吾と川太郎のもとへ歩み寄る。

「水入りだ」

晴明は両者に告げた。

水入りとは、相撲で勝負がつかないまま時間がたった時、取組みを一時中断させて休ませることをいう。

「もうそんな時間か」

善吉は時計を見た。

勝負が始まってから5分近くが経過していた。

「明菜、水を持ってきなさい」

善吉はそう命じた。

水入りの時には力水といって、水を口に含む。

明菜は立ち上がると家の奥へ向かった。

一方、大吾と川太郎は左右に離れて見合った。

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