陰陽(教)師
「一人じゃ無理だよ!」

ドライバーは、あわてて声をかけた。

「大丈夫です」

学生はそう答え、腰を落とし、一度大きく深呼吸する。

そして気合一閃、トラックの後部を一気に持ち上げた。

そのまま学生が横に動くと、側溝に落ちていた右後輪は、あっさりと地面に戻った。

ドライバーは呆気にとられた。

2tトラックを一人で持ち上げた。

自分は夢か幻を見ているのか。

そう思った時、学生がこちらに戻ってきた。

「タオルお返しします」

その圧倒的な体格を目の前にして、ドライバーは我に返った。

「ああ、ありがとう。助かったよ」

タオルを受け取りながら礼を言うと、学生は会釈を返した。

そしてバッグを手にすると、この場から立ち去った。

「あれなら10tトラックでも持ち上げたかもな」

巨大な背中を見送りながら、ドライバーはつぶやいた。

「それにしても、なんで滑ったんだろうな?」

ドライバーは首をかしげた。

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