陰陽(教)師
脱輪は、タイヤが滑り、ハンドルを取られたためだった。

今は一月。

今朝も最低気温を記録したが、路面には凍った場所はひとつもない。

首を傾げながら路面を見渡すと、あるものが目に入った。

それは手の平大の大きさの【塊】だった。

黄色、いや茶色に近い。

ドライバーは腰を落とし塊を触わってみた。

ヌルリとした感触が指先に伝わった。

顔をあげて見渡すと塊はあちこちにあった。

否、あちこちという言い方は適当ではない。

ジグザグで等間隔に並び、道路を縦断しているように見えた。

トラックはこの塊にタイヤをとられたのか?

真冬の寒さにも凍らないこの塊はなんだ?

ドライバーは何気なく、指先についた塊の匂いを嗅いでみた。

「生臭い…!」

思わず吐気をおぼえた。

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