生きた証 SILENT VOICE
二歩〜伝える〜
三条 琴美

さんじょう ことみ

俺は電話帳の彼女のデータを

消去しようとしていた

『結局、彼女を救う事が出来なかったんだ』

『悠はその人を本当に大切に思ってたんだね』

琴美と出会って俺の病気は無くなっていった

あれから十年

彼女と連絡を取り合う事も無くなっていた

『悠、私は消えたりしないよ』

隣には今の恋人

琴美の事を話そうと思ったのは

何故か分からない

でも

話しておきたいと急に思ったんだ



『おはよう』

彼女はニコッと笑う


きのうは

はなし

きいてくれて

ありがとう


彼女の言葉はとても優しく包んでくれる

『ううん、どう致しまして』

時間はどんどん進む

彼女と話していると時間はとても早かった


ねえ

きょう

めーる

していい


『もちろん!待ってるよ』

彼女からそんな気持ちが聞けると思ってなかったから

嬉しくて飛び上がりそうだった
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