楽々荘の住人十色
さよならは、言わなかった。
ただ朝まで愛しあって詩音と一緒に朝日を浴びた。
詩音の部屋の鍵を返して、いつもと違う足どりで楽々荘への帰る。


寮の部屋の扉には無理矢理、挟まれた封筒が苦しそうに引っかかっていた。

中には、シワシワになった松本さんの名刺とパリの事務所へのルートを赤いラインで引いた地図と果たし状と書かれた封筒。

部屋の壁には、実春が並べた「NEON」切れ端と一緒にその地図を張った。
















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