世界の果てに - 百年の光 -
「あたし…生け贄になるのは嫌。だから、魔術師に見つからないようにして、他にこの世界を救える方法はないか考えなくちゃいけないんだよね?」
エルとアスティは何も言わず、あたしの言葉を聞いていた。
これは、チェディさんから話を聞いて、あたしたちが決めたこと。
―――でも。
「このまま、世界を救う方法が見つかったとして、あたしが元の世界に帰れたとしても…クリスはどうなるのかな」
『……リオさん』
クリスの声が、脳裏に響く。
あたしはクリスの純白の姿を、瞳に映した。
「クリスを元の人間の姿に戻してあげるためには、やっぱり魔術師を探さなきゃいけないんだよ」
あたしが知らない世界に連れてこられて、戸惑っているように。
クリスも姿を変えられて、戸惑ってるに決まってる。
「あたしだけ助かるなんて、そんなの嫌だ。クリスだって…」
『いいんです、リオさん』
クリスのはっきりとした声に遮られ、あたしは口をつぐむ。
『わたしは、元の姿に戻れなくても、死ぬわけじゃありません。…リオさんの命の方が、大事です』
「…クリス」
『わたしのことは、気にしないで下さい』
そのときあたしには、クリスが微笑んだように見えた。