世界の果てに - 百年の光 -

驚きと戸惑いを瞳に浮かべたまま、エルが口を開く。


「…リュウ…?冗談だろ」


「冗談じゃないわ。確かにリュウさんは、うちに来たのよ」


ダルクより早く、エルの腕にしがみついていたユーリが答えた。


何もかも分かっていて、エルを労るようなその表情に、ズキンと胸が痛む。


パッと視線を逸らすと、複雑そうにエルを見るアスティが視界に映った。


「……なんて?」


普段からは想像できない、エルの小さな声が響く。


視線を戻すと、ダルクは眉を下げて言った。


「活動を…"月の咆哮"を、再開するんだって。単純に、僕らは誘われてるんだよ」


「………!」


こんなに動揺を表すエルを、あたしは初めて見た。


月の咆哮って…確か、エルと手錠で繋がったときに、何回か聞いた単語だ。


その言葉が何を意味するのか、未だに分からないけれど。


「…俺は、戻る気はもうない」


エルは拳を握りしめたまま、ユーリの腕を振りほどき、背を向けた。


そのまま何も言わず、歩き出す。


「……エルッ!」


あたしはエルを呼ぶと、消えてしまいそうな背中を追いかけた。


< 333 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop