世界の果てに - 百年の光 -
オーガに続いて入った部屋は、小さな物置部屋のようだった。
扉に衝立をし、窓のカーテンを閉めると、オーガはオレたちに向き直る。
「……リュウは?」
「あいつにはユーリを任せてある」
エルの答えに、オーガはそうか、と小さく答えたあと、小型の通信機を取り出した。
「ダルク、聞こえるか?アスティとエルと合流した。リュウからは何か入ってるか?」
オーガがそう言うと、ザザッと音がしたあとにダルクの声が聞こえてきた。
『…エル、アスティ、大丈夫?リュウさんからは、まだ連絡はないよ…ユーリの通信も途絶えたままだ』
一人だけ城の外にいるダルクは、きっと心配なんだろう。声に動揺が表れていた。
「了解。引き続き情報を頼む」
『うん…でも、僕もそっちに行った方が…』
戸惑うダルクの声を聞いたエルが、オーガから通信機を奪い、口を開いた。
「情けねぇ声出してんじゃねぇよ。ユーリは無事に救いだす」
『……エル…』
「個々の状況が分からない俺たちにとって、お前が頼みの綱なんだ。兄貴らしい声で、ユーリの通信機に声掛けててやれよ」
エルの言葉に、暫く沈黙したあと、ダルクの小さな笑い声が響いた。
『…ふふっ…ありがとう、エル』
「礼を言うのは全部終わってからにしろ」
はん!といつも通り偉そうに鼻を鳴らしたエルは、通信機をオーガに突き返した。