王子様じゃナイト!
それから数秒フリーズしたあと、強く抱きしめられすぎて痛いことに気がつき、凌也にSOSを出す。

「……凌也、ちょっと痛いよ…」

「あ!あぁ…すまねぇ…」

凌也本人も無意識のうちだったらしい。慌てて腕を離した。


なんとも言えない無言が二人を包み込む。

その雰囲気をかき消すように凌也がしどろもどろに話し出した。

「そ、その…さっきのはえっと…信用できるヤツじゃないとダメだ、っつー意味で……」

「そ、そうだよね。うん、分かってたよ!
信用してもらえてるだなんてわたし嬉しいなー」

これは半分ウソ。
信用されているのは確かに嬉しいけれど心のどこかで残念がってる自分がいる。



……え、どうして残念がってるんだろう?

ウソまでついて、わたしは何の感情を偽っているの?


「…助けてもらってありがとう。でも、どうしてこの事が分かったの?
あの時はいなかったのに…」

「あぁ、それはアキとか言うヤツに教えてもらったんだよ」

「え?!アキちゃんに?!」


脳裏に満面の笑みでピースサインをするアキちゃんが浮かんだ。

……しそう。あの子ならしそうだ。


「おぅ。だからそいつにもお礼言っとけよ」

「うん!でも、本当にありがとう!凌也!」

「っ……///」

にこり、と微笑んでお礼を言うと、凌也は顔を赤くしてそっぽを向いた。
風邪でも引いてるのかな?

「ほ、ほら!早くお礼言いに行くぞ!」

「ちょ、ちょっと待って!待ってってばー!」


早足で出て行った凌也を追いかけて、わたしは屋上をあとにした。



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