我が家の妖怪様
「あの短い布はなんだ!! 幸子でもあんな姿をした事はないぞ!!」

 幸子って、そりゃ俺の母親の名前だ。
 俺だって母親のあんな制服姿見たことないわ! 頼まれても見たくない!!
 制服のスカート丈が短いだけで破廉恥だと嘆く泰葉にため息が零れた。

「泰葉、あれはファッションだ。お前達だって、毎日同じ服を着るわけじゃないだろう?」
「当たり前だ! 主は馬鹿なのか?」

 いや、毎日同じ服じゃないくらい俺でも分かる。ただ、どれがどう違う服なのか、全く見分けはつかないけど。
 泰葉の服はあの天狗様が着る服だから、見た目でははっきりと違いの判断がつかないのは当たり前か。

 大学に着くまで泰葉の言動には驚かされるばかりだった。鴉天狗と言うだけあり、鴉が近付いて来るのも分かるが、鴉と会話するのには目が点になった。
 話しの内容も、何処に巣作りをしたら良いのですか? なんて、お昼間の相談番組みたいなことで。

 それに真剣に答える泰葉にも笑えたが、鴉の声が聞こえたことにも笑えた。俺が鴉と話せるなんて、馬鹿みたいな話しだ。

 だけどそれは現実で、風の音さえも声に聞こえる。風が俺に毎日語り掛けて来るんだ。
 これが、風の守護者の力なのか分からないが、風が色々と教えてくれる。雨が降るとか、変な香りが向こうからするとか、とにかく下らないことでも、風は俺に伝えて来るのだった。
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