秘密
SIDE.門田悠平
「だからね、もう、秘密は終わり」
悠平はただ、立ちすくんでいた。
何かを考えるように暫く佇むと、ハッとしては足を前へ出す。
「門田君は、その気持ちを誰にも話さなくて良い。話さなくて良いからこそ、秘密にするのは終わり。周りは知らなくても、あたしがいることでその本心を隠しては駄目」
「……」
珠子はキビキビと歩いてみせた。
悠平は何も言えなくなって、珠子の後ろをついて歩いた。全身が心臓であるかのように動悸が激しくて、足の裏を引き摺るように歩いた。
「こんなこと言って、ごめんね」
「タマ、」
「もう、門田君にお弁当作れないや」
珠子はくるりと回れ右すると、ニコリと微笑んでそう言った。
ちょうどよくバス停に到着していて、そこへバスが滑り込んできた。
ドアが開いた途端、珠子は走って乗り込んでしまった。
悠平は、珠子の笑顔が頭から離れずに突っ立ったまま動けなかった。
バスの運転手が乗らないのかと聞いてきたので、行って下さいと促した。
タマの目に光る涙が見えたことは、俺の中での、最後の秘密だ。