秘密
SIDE.門田悠平
悠平は好美に渡された弁当をどうしようかと思いあぐねていた。
本来ならば珠子の弁当を昨日と同様に、一緒に食べるはずだというのに。
悠平はあのときの珠子の哀しい声が頭から離れず、もやもやした気持ちを抱えていた。
「はあ」
突っ立ったままでは仕様がないので、悠平は非常階段へと向かった。
「あれ、タマ?」
いつもの非常階段には先客がいて、それがまた珠子である。
珠子は階段に座り込み、小さくなって顔を膝に伏せていた。
「っ……」
肩を震わせる珠子を見た。
すると、悠平は何も言えなくなった。
珠子の隣りには空になった弁当箱と、まだ包みも開けられていない弁当が置いてある。
悠平はとても申し訳ない気持ちになった。
「タマ……」
悠平はゆっくりと珠子の肩に触れた。
珠子はびくりと反応し、伏せていた顔をあげて悠平を見た。
「門田君……」
「タマ、ごめんな」
「っ……」
悠平は珠子の頭を少し荒っぽく撫でる。
珠子の目は泣いた事実を隠しきれずに真っ赤になっている。
そんな珠子を目の当たりにした悠平は胸が締め付けられる想いがした。
「タマに弁当を頼んだって、先生も知っていたはずなんだけどな」
「うんっ……」
頭を撫でられている珠子は顔を手で覆いながらまたしゃくりをあげ始めた。