秘密
SIDE.今野珠子
「そんなに泣くなよ」
あたしだって、どうしてこんなに泣いているか解らないよ。
門田君があたしの肩に触れて、門田君が隣りに来たことに気付いた瞬間、嬉しいというよりも安心に似た感情が溢れた。
ああ来てくれたじゃない、と。
「タマ、この弁当食ってもいいの」
「へ?」
門田君の発言に少し驚いた。
もう雨宮先生の作ったお弁当を食べたのだとばかり思っていたから。
「先生に……もらったお弁当は?」
「ん?んー、ここにあるけど」
「あたしの、でいいの?」
そう聞いた珠子を悠平は不思議そうに見つめた。
「先生がせっかく作ったのに……」
最後の方は少し口の中でこもった。
「俺がタマに頼んだんだからいいの」
少し顔を背けながらもそう言った悠平は、早速弁当の包みを開け始めた。
蓋を開けると、色とりどりなおかずで弁当箱は詰まっていた。悠平は、持ち上げたウインナーを口の中に放り込んだ。
「ん、旨い」
米一粒も残さずに食べる悠平の様子を、珠子は頬を紅潮させながら見つめていた。