秘密
SIDE.門田悠平
珠子も悠平も、非常階段まで向かう道のりの間、互いに話すことはなかった。
その距離は非常階段に近付くにつれて次第に近くなってゆく。珠子の背を追いながら、悠平はそんなことを考えていた。
閑散とした非常階段の風景は、とても久しく感じられた。悠平は、階段の際で立ち止まった珠子を尻目に、自ら段に腰掛けた。
暫くして珠子も悠平に倣い、悠平の隣りに、とは言っても少しの間を取って腰掛けた。
「……」
珠子はおずおずと弁当を差し出す。
ぼんやりとしていた悠平は慌てたようにそれを受け取った。
「……タマ、ごめんな」
「……」
ぽつりぽつりと話し始めた悠平に、珠子は耳を傾けていた。珠子はゆっくりと弁当の包みを解いていた。
「俺が勝手に怒って、怒鳴った。タマは悪くないんだよな」
「……そんなことないよ」
「勝手に慌てた俺が、タマを巻き込んだだろう。タマには何の関係もないのに」
珠子は包みを広げたまま黙り込んで動かなくなった。