空白の時間=友情>愛情

忘却

部屋にひきこもっていたオレを見かねた母親が、心配そうに声をかけた。

「直紀のせいじゃないわよ。きっと賢二くんは見つかるから」



―何にもわかっちゃいねぇな…。
オレと賢二は…。

オレは母親の顔を見つめ、だまってうなずいた。



夏休みが明ける頃には、警察からの連絡も来なくなった。

休み明けの学校は賢二の話題で持ちきりだった。

誘拐、家出、あるいは殺人事件…みんな好き勝手なことを噂していた―。



しかし、ざわついていた学校も10月になると…平穏を取り戻す。

まるで賢二など初めから存在しなかったように―。



賢二のことを思わない日はなかったが…季節はうつろい、賢二の温もりを忘れさせるかのように冬がやってきた。



春になり、大学への進学が決まったオレは…賢二にもらった貝殻を机の引き出しから出すことすらなくなっていた。
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