空白の時間=友情>愛情

期待

父親の死の悲しみを感じさせないほど、翼は元気だった。

夏休みを目前にしたテスト週間に入って、生徒たちはピリピリとした表情をしている。

しかし、翼は相変わらず周囲に明るい笑顔を振りまいていた。



「やっと見つけた!広田先生!!」

テスト週間の最終日、購買部の前で翼に呼び止められた。

「どうした?広沢」

「今日の夕方、河川敷のボート乗り場まで来てくれませんか?」

「どうして?」

「一生のお願い!6時ぐらいに行きます」

「おい、お前…勝手に決め…」

「お願いしまーす」

翼はもう駆け出していた。



オレは苦笑いをして、その姿を見送った。

やっと賢二のことを何か話してくれる気になったのかな?

淡い期待を持たずにはいられなかった。
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