空白の時間=友情>愛情

本望

9月1日-。

休み明けの教室は騒然としていた。

直紀は大声で生徒を静めた。

「いつまでも休み気分ではダメだぞ。明日からは授業も始まるんだからな」



翼は部活中にシューズのひもが切れた。



直紀は午後から頭痛が激しくなり、学校を早退した。



ふたりとも、何か悪い胸騒ぎを覚えていた。



残暑が厳しく、夕方になってもわずかに感じられる涼しさをかき消すように蝉の鳴き声が響いていた-。



この日、中村健吾は約2ヶ月ぶりに上海へ渡った。

上海浦東国際空港からリニアモーターカーに乗り…上海市内に向かう途中、3人の見知らぬ男に囲まれた。

「次の駅で降りてもらう」

背中には冷たい金属が突きつけられていた-。



中村健吾はこれから自分の身に何が起こるかを悟った。

そして、この男たちが誰の指示で行動しているかも…。

―相討ちなら本望だ。



車に乗せられ、頭に黒い袋を被せられた。

静かに目を閉じて、直紀のことを考えた。



―オレがオレを捨てても…オレを捨てないでいてくれた人…。

オレにとっての愛情は、ナオにとって友情だった…。

でも、愛情を上回る友情で包まれたオレは幸せだったよ…。



【完】





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