ループ・ロープ・ホープ・テープ
ループ
ループは今日も
この寂しげな水族館にいた。
田舎の水族館は
皆寂れてしまったのだろうか。

高度経済成長期には
人で溢れかえっていたここも
今では圧倒的に魚のが多い。

別に魚が好き
というわけではないが
水族館に足繁く通い
この、
「海に帰れない生き物たち」に
思いを馳せるのが
日課となっている。

ループは今日も
水槽を見つめるふりを
していた。

水槽に映った自分自身こそが
海に帰れない生き物だと
僅かに感付きながら
現実的に見えて
全く現実を見ようとしない、
その目蓋のない眼は
ゆらゆらと、海藻のように
揺れていた。

誰にもばれないように。
気付かれないように。

ループは今日も
水槽にむかって
「生きぞこない」と
独り事を言い
寂れた水族館を後にした。
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